とびひのお話


この時期に「とびひ」という言葉をよく聞くかと思います。

特に、「傷から汁が出ていると感染するから」と言われて絆創膏を貼られているお子さんをよく見ます。(外来でそれをはがすのも大変なのですが)


ここで、「とびひ」について、正しい知識を持ってもらおうと思います。

「とびひ」、正しくは「伝染性膿痂疹」と言いますが、傷に細菌がつくことで大小さまざまな水ぶくれを作るものです。傷についた細菌が作る毒素(表皮剥奪毒素と言います)で水疱ができるものです。

水疱が破れれば汁が出て、汁の中の菌が他の傷に伝播すればそこでさらに水疱を作って「とびひ」という状態になります。

原因になる菌は『黄色ブドウ球菌』という菌と『連鎖球菌』という菌が主に原因となります。


ちなみに、皮膚自体は無菌ではありません。皮膚には相当数の菌が存在し、これがいないと皮膚自体の機能も低下すると言われています。

皮膚には主に『表皮ブドウ球菌』という菌と『黄色ブドウ球菌』という菌がいます。


皮膚にいる『黄色ブドウ球菌』も、とびひの原因になっている『黄色ブドウ球菌』も同じ菌です。

皮膚には同じ菌がいるはずなのに、何故とびひを発症したり発症しなかったりするのでしょうか?


とびひは、「傷」に「細菌」がつくことで発症します。

一方、健康な皮膚には「傷」はほとんど存在しません。


つまり、とびひになるには「傷」が必要になると言えます。

夏場はあせもなど、傷ができやすい状況が増えるので、必然的にとびひにはなりやすいと言えると思います。


要は、汁を触るだけでは感染は成立しないということです。

そこに傷があって初めて感染が成立する、ということになります。


ガーゼで傷を覆うのは治療でも何でもありませんし、傷の消毒も効果は限定的です。

傷を消毒してもその効果は2-3時間がいいところで、効果が無くなれば周囲の皮膚から菌が入ってきます。

当然その中には先ほどお話しした黄色ブドウ球菌もいるので、ガーゼを貼って傷を消毒しているがなかなか治らない、ということもよくあります。

また、傷にガーゼを貼ることで、ガーゼをはがすときに痛いという問題も出てきます。

当院でとびひの治療を受けた方はご存知かと思いますが、当院ではなるべく早くとびひを治すために、怪我に対して行っている『湿潤療法』を組み合わせた治療を行っています。


とびひにならないのが一番いいのですが、とびひの際にはご相談ください。